この手だけは、ぜったい離さない
洋くんの仕事現場に、サンドイッチを作って持って行くという約束をした次の、そのまた次の日。
この日は日曜日。
朝からサンドイッチ用のパンやら、ハムに卵、キュウリやツナ缶を買ってきた私。
スーパーから帰ると、さっそくサンドイッチ作りにとりかかった。
「あらぁ、なにやってんのあかり?サンドイッチ用の食パンを5つも買って…ピクニックでも行くの?」
キッチンでせっせとキュウリを切っていると、お母さんが私の手元を覗きこんできた。
「ちょっとね。洋くんと一緒にサンドイッチを食べようかなって思って作ってるの」
キュウリを切り終えたから、次は薄焼き卵を作らなくちゃ。
卵はちょっと甘めの味付けが好きなんだけど、洋くんは気に入ってくれるかな?
なんてボールの中で卵をかき混ぜていると、リビングでテレビを見ていたお父さんがはっと振り向いた。
「洋くんって……もしかして仙崎くん?えっ、一緒にってお前ら付き合ってるのか⁉」
「えぇーっ、洋くんに作ってあげてるの⁉ちょっとあかり、それってまさか⁉」
「ちょっとふたりとも。同時に話しかけてくるのはやめてよぉ」