この手だけは、ぜったい離さない
確か休日は、校庭を開放しているんだよね?
開け放たれた正門から、6年ぶりに校庭に足を踏み入れた。
「わぁ……!久しぶりだなぁ!」
入ってすぐの場所に見えたのは、波を打っているかのようにぐねぐねとしたうんてい。
横並びに、滑り台がついたジャングルジムがあって、その隣にはブランコ。
その隣には鉄棒にのぼり棒、シーソーなんかも当時のまま残っていて。
なんだか嬉しくなってシーソーに跨ってみると、当時の記憶が鮮明に甦ってきた。
シーソーはいちばん好きな遊具だったから、洋くんともよく遊んだなぁ。
私は「ぎっこんばっこん」って言いながら、交互に地面を蹴りあうっていうオーソドックスな遊び方が好きだったけど。
洋くんはシーソーの中心部分に立って「波乗り!」とか言いながら、バランスをとるっていう遊びが好きだったんだよね。
「おーい、あかり」
シーソーに跨ったまま回想にふけっていると、後ろから洋くんに呼ばれて振り返った。
「なにひとりで遊んでんの?それ、ぜったいにひとりで遊べないやつだろ」
白い半袖のポロシャツ。
下はいわゆるニッカという、ポロシャツと色を合わせたダボダボのズボンを履いていて。
首元にタオルをかけて現れた洋くんは、そのとび職特有の作業着が似合っていて、なんだかいつにも増してカッコよくて。
思わず、ぼーっと見入ってしまった。