この手だけは、ぜったい離さない
「あああ……信じられない。あの可愛かった洋くんが……まさかヤンキーになってるなんてさぁ…」
「そりゃあ6年も経てば随分変わるわよぉ。男の子なんて背もぐんぐん伸びるし、声だって低くなるしねぇ」
「でもさ……だからって変わりすぎじゃない?入学式のときにお母さんも洋くんを見たでしょ?」
お母さんがつくってくれた大好きなオムレツを頬張りつつ。
もう朝から何回ため息をついているんだろう……私。
だって洋くんがあまりにも変貌しすぎてて…。
洋くんに会えることをいちばん楽しみにしていた私には、昨日のできごとはあまりにも衝撃的だった。
目が大きくて女の子みたいな可愛らしい顔立ちだった洋くんのことだから、きっとどこぞのイケメンアイドルみたいになっているんだろうなーって。
『久しぶりだね、あかり?』
なんつって、爽やかに笑いかけてくることを妄想していたわけでして。
そりゃあもう驚いたのなんのって。
「もう昨日から何回言ってるのよ、そんなことはいいから早く食べなさい。新学期そうそう遅刻するわよ?」
「……はーい」