幾千夜、花が散るとも
花一夜 【オマケ編】
千也が帰ってきた。全く変わってもないあの笑い顔を見た瞬間、涙が出そうになった。

遅いんだよ・・・!! 全身の細胞が喚いた気がした。
今まで俺達をほったらしてどこ行ってたんだよ。
残された俺達の気持ち、考えたことあるのかよ。
可南がどれだけ泣いたと思う?
気が狂いそうなくらい泣いて、泣いて。

俺がどれだけ。

千也を恨んで、憎んで、願って、待ったか。



俺よりちょっとだけ背が高い男の顔を勢いのまま殴ってから。可南が顔だけはやめてって言ってたのを思い出した。

「一発じゃ足んないだろ」

千也は悲しそうに笑った。

「一也の気が済むまで殴っていいよ?」



・・・・・・・・・そうしたら絶対に可南が泣く。今だって千也を心配そうに見つめてる可南が、きっと傷付いた顔をする。

俺はスマホも財布も何も持たず、家を飛び出した。逃げた。これ以上可南を見ていたら、千也をこの世から消したくなりそうで。

・・・怖かった。
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