幾千夜、花が散るとも
 二人とも寝間着代わりのスェットを着たままで台所に下りる。
 コーヒーメーカーをセットしたりカチャカチャやってる内に、千也も隣りの自分の部屋から出てきた。

「おはよ千也」

「ん・・・おはよ」

 起き抜けのフレンチキスも一緒に寝るのも、ウチじゃ日常茶飯事だ。

「一也。オレ、ネギ入れてー」

 まだ眠そうに間延びした千也の声に短く返事が返る。
 三人とも料理は出来るけど、一番器用というか何でもキレイに作れるのは一也。十八番(おはこ)はオムレツと玉子焼き。そして千也は何でもネギを入れたがる。

 洋食屋さんかってぐらい形のいいオムレツが出来上がり、ダイニングテーブルで遅い朝ごはんを囲む。
 寝グセがすごいコトになってる、だらしないカッコの千也と。王子サマの仮面はどこへやら、引きこもりモードの一也と。でもこういう時が一番なんか。家族の団らんぽくて好き。

「カナは今日はどっか出かけんの?」

「んー、今日は一也に任せてる」

 多分また、夜までベッドの中だけど。

「映画の優待券もらったから二人で行ってくれば?」

 千也の提案に一也を窺う。

「どーする?一也」

「・・・・・・・・・・・・・・・行く」

 たっぷり30秒以上は間が空いたと思うけど、珍しく出かける気になったらしい。 
 
「じゃあ観たいの決めといてね?」

 あたしが笑いかけると、一也もフッと笑みを零した。
 何となく。・・・何となくだけど、なんか企んでない?、キミ。



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