幾千夜、花が散るとも
千也は濃紺の夜空を仰ぎ、長く白い溜息を吐いた。

「まあイロイロあってねぇ。・・・でもオレはヤクザじゃないよ、それだけは信じてていーから」

「俺達に迷惑かかることは何もしてないんだよな・・・?」

「うん。恩返ししてるだけ。オレには大事なひとなんだよ、すごく」

端正な横顔に淡い笑みが浮かんだ。

「もうどこにも行かないけど、まだ恩返し中。・・・って言ったらカナに怒られるかなぁ」

「つまりずっとヤクザと関わってくつもりなんだな。あれだけ心配させといて」

「ゴメンネ一也」

やんわりとそれだけを言う千也。
なにを譲れないか、とうに腹は決めているようだった。

「・・・謝って済むなんて思うなよ」

冷たく突き放してやったのに。やっぱり儚そうに笑っただけだった。
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