幾千夜、花が散るとも
 行き交う殆どの女子の目線が一也に吸い込まれては、通り過ぎてく。
 キャメル色のPコートに、こげ茶色のスリムパンツ。グレーのパーカーのフードをコートの襟もとから覗かせ、UネックのTシャツの首元にはチョーカー。派手な恰好をしてる訳じゃないのに、なんでこんなに目立つかな、この子は。

 隣りを歩く、タートルセーターに編み目模様が大きいニットのパーカー、チェック柄のフレアスカートを合わせて、ショート丈のダッフルコートっていうあたしの恰好も一也のチョイスで。どうやらパーカーってアイテムをお揃いにしたかったらしい。

「可南は何着ても似合う」

 すっかりご機嫌も直って一也はご満悦そう。

 車もあるのに手を繋いで歩きたいって、わざわざ電車に乗って移動する。扉のそばに立つと後ろからあたしをホールドしたまま時々、頭の天辺にキスを落としたり。
 ・・・・・・傍から見たらただのバカップル。決定。これがやりたくて出かけるコトにしたんでしょ、キミ。



 大型ショッピングモールのシネコンで、ちょうど話題の実写化作品を観て。今どきはCGで何でも出来るから見応えはあるけど、やっぱ原作のイメージがねぇ。・・・なんてもっともらしいコトを喋りながら、ついでにショップも見て回る。

 歩いてても立ち寄っても、あちこちからチラチラ視線が飛んで来ては。恋人繋ぎしてるあたしを容赦なく盗み見てく。あーハイハイ、好きなだけどーぞご覧ください。ウチの子すっごいイケメンでしょお? 毎度のことだから気にはならない。むしろもうバカップルでいる方が、ラクだわ。

「可南、俺の選んで」

「一也は何着ても似合うよ?」

「・・・適当なこと言うとここでキスするよ」

 キレイな顔に睨まれた。 
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