幾千夜、花が散るとも
タバコ咥えたまま口の端で笑んで、何てことない仕草だったと思うのに。突如、千也を誰にも渡したくない、ずっと自分だけのものにしたい、その口を塞いじゃいたい。って、好きすぎるお兄ちゃんに欲情してた。
年季の入った重度のブラコンのはずが、うっかりなんだか、あっさりなんだか、ネジが弾け飛んだみたいに。“妹”を降りたいって真っ直ぐ思った。
目を見張って一瞬固まった千也は、研いでた手を口許にやって。指の間に挟んだタバコを深く吸い、回してる換気扇に白い煙を逃してた。
『・・・やめてどうすんの?』
こっちに視線を傾げた千也に、もっともなコトを訊かれたっけ。
あたしは少し考えて。
『妹じゃなくて千也とずっと一緒にいるには、どうすればいいの?』
『・・・・・・オレがカナの男になる。かな?』
『なって・・・くれる?』
『妹やめるって言われちゃったしねぇ』
まるでこうなるのを分かってたみたいに。千也は飄飄と笑った。
『でもお姫サマがハタチになるまでは、お兄ちゃんな? カナが自分で自分の責任取れる歳になったら、オレが抱いてあげる。だからそれまで他の誰にもあげないって約束。いい?』
タバコの火を流しで揉み消すと、三角コーナーに捨ててあたしに向き直り。顎に手をかけて上を向かせ、何の躊躇いもなく唇を押し当ててキスをした。
いったん離れた千也と目が合って。どちらからともなくもう一度。しっとりと吸い付くような。千也にしてはずい分と控えめなキスだった。壊れ物に触れるような優しいだけの。
二十歳の誕生日。約束どおりに千也をもらった。あたしのハジメテを。千也にあげた。
『・・・オレに抱かれたらもう他の男には抱かせないよ、カナ』
ソンナモノが入るの、って怖さに躰を強張らせるあたしの耳元で千也が囁いた声。穏やかで深くて、静かな声だった。
『一生、大事にするから。一生オレだけで我慢して』
あの約束は絶対だった。
・・・忘れてない。
忘れてないよ千也。
たとえ今、一也の腕の中にいるんだとしても。
年季の入った重度のブラコンのはずが、うっかりなんだか、あっさりなんだか、ネジが弾け飛んだみたいに。“妹”を降りたいって真っ直ぐ思った。
目を見張って一瞬固まった千也は、研いでた手を口許にやって。指の間に挟んだタバコを深く吸い、回してる換気扇に白い煙を逃してた。
『・・・やめてどうすんの?』
こっちに視線を傾げた千也に、もっともなコトを訊かれたっけ。
あたしは少し考えて。
『妹じゃなくて千也とずっと一緒にいるには、どうすればいいの?』
『・・・・・・オレがカナの男になる。かな?』
『なって・・・くれる?』
『妹やめるって言われちゃったしねぇ』
まるでこうなるのを分かってたみたいに。千也は飄飄と笑った。
『でもお姫サマがハタチになるまでは、お兄ちゃんな? カナが自分で自分の責任取れる歳になったら、オレが抱いてあげる。だからそれまで他の誰にもあげないって約束。いい?』
タバコの火を流しで揉み消すと、三角コーナーに捨ててあたしに向き直り。顎に手をかけて上を向かせ、何の躊躇いもなく唇を押し当ててキスをした。
いったん離れた千也と目が合って。どちらからともなくもう一度。しっとりと吸い付くような。千也にしてはずい分と控えめなキスだった。壊れ物に触れるような優しいだけの。
二十歳の誕生日。約束どおりに千也をもらった。あたしのハジメテを。千也にあげた。
『・・・オレに抱かれたらもう他の男には抱かせないよ、カナ』
ソンナモノが入るの、って怖さに躰を強張らせるあたしの耳元で千也が囁いた声。穏やかで深くて、静かな声だった。
『一生、大事にするから。一生オレだけで我慢して』
あの約束は絶対だった。
・・・忘れてない。
忘れてないよ千也。
たとえ今、一也の腕の中にいるんだとしても。