幾千夜、花が散るとも
5章
「可南、明日は俺に付き合って」

 大皿に盛った肉野菜炒めをつつきながら、一也が言ったのは金曜の夜。あたしの誕生日の前々日だった。

「誕生日祝いするから」

 あたしが何かを云う前に一也はあっさり目的をバラす。今までそう云われて、気持ちが引っかかるなんてコトはある訳もなかった。素直に喜んで無邪気にOKして。

 嬉しいって思うのはウソじゃない。それでもあの夜が過ぎって、一瞬だけココロをざわつかせた。あれは墓場まで持ってく。あたしはそう決めてる。
 終電逃す前に二人で帰って来て、だから千也には知られてない。紅い跡も消えたし、一也はあれからも一緒に寝たがるけど、抱き締めてキスしていつもと変わらない。

 ・・・変わることを拒んだあたしを、力尽くで壊すなんて真似はやっぱり一也には出来っこない。そう信じるから。

「ん。楽しみにしてる」

 笑って云える。





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