幾千夜、花が散るとも
 日曜日ってだけあって、家族連れやら恋人連れやらで賑わう水族館。海の近くならイルカショーとかあるんだろうけど、今日のここは商業施設内にあるアミューズメントパークだ。
 あたしは割りと動物園も植物園も好きなほうで、逆に遊園地はあんまり。単に絶叫マシン系が苦手だから。あんなの・・・ムリ。きっぱり。

 千也は興味ないかもって思ったけど、見始めたら案外食いついて観てた。

「うわ、ナニこれ、でかい」
「え、どこ? どこにいるの?」
「カナ、ペンギンいる!」

 楽しんでいただけてるようで何よりです。

 取りあえずあたしも見たかったのは水中トンネルがある巨大水槽で。ガラス越しなんだけど、自分も海の底に立って回遊する魚達を下から眺めてるような。当たり前だけど、人間は水の中じゃ生きられない。彼らは空気に触れられない。同じ世界に住んでるのに不思議な気がする。
 
「満足できた?、お姫サマ」

 手を繋いで片時も離れず、傍らにいる千也がこっちを見て笑った。

 あたしがって言うより、コドモみたいに無邪気な千也を見れたから文句ナシ。たまにはこんな息抜きもいいかなって。いつもあたし達のコトばっか考えて自分を削ってるみたいな千也に、次はプラネタリウムなんてどーかな。内心でクスリ。
 
「うん。あとお土産なに買おっかなぁ」

「ラッコのぬいぐるみ買ってあげよっか」  

「ゴマちゃんがいい」

「? ソレ食べもの?」


 ゴマちゃんはゴマフアザラシですよ。おにーさま。 
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