幾千夜、花が散るとも
 こんな賑やかな街に来てホテル入るとか。しかも昼間だし、思った以上にかなり赤面モノな体験。あたしの手を引いて歩く千也は飄飄と、立ち並ぶファッションホテルの一つに入った。

「ゆっくり出来るし先に風呂入ろっか」

 中に入っちゃえば二人だけの世界。もう気兼ねなんて何もない。いつも夜だから時間を惜しんじゃうけど、今日は追われなくていい。嬉しくてドキドキして、キュンとなる。

「おいで。洗ってあげる」

 バスチェアに腰掛けた千也の膝の上でされるがままになって。お湯の中でもちょっと啼かされた。

 
 ベッドであたしを組み敷いた途端。千也の空気が変わる。

「・・・カナ」

 容赦なく貪られる。責められて侵される。千也のものにされる。それだけであたしは。

「せん、や・・・ッ」

 あたしはそれだけで幸せだからね。
 千也と一也がいてくれたら、他には何もいらないからね。
 一生、兄妹でも。そんなのはどうだっていい。

「・・・千也ぁ・・・っっ」

 堪えきれなくて何度も名前呼んで。

 呼ぶごとに千也は遠慮なしにあたしをもっと深く溺れさせる。

 突き上げられながら、うねる昂ぶりに何も考えられない。

 千也が低く呻いて何かを云った。

 最後の波に呑まれて、あたしも何かを口走った。



 奥に生温かい熱をぼんやりと感じて。千也があたしの肩口に顔を埋め、少し荒い呼吸で抱き締めたまま動かない。

「・・・・・・カナ、動いちゃ駄目だよ」

 一つ大きな吐息を漏らした後。上体を起こして見下ろす千也の表情は穏やかで優しかった。

「オレの子、そろそろ欲しくない?」

 やんわり微笑んであんまりに思わない告白だったから。嬉しさのあまり、あたしは力いっぱい首に抱きついて。・・・・・・泣いた。
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