幾千夜、花が散るとも
 月末が連休になる分の詰まった仕事もどうにか片付け、心置きなくゴールデンウイークに突入。みなみ先輩も彼氏と旅行に行くって言ってたから、連休明けはお土産交換会かな。

 一泊とは言えそれなりの荷物を積み、千也のミラージュで出発する。助手席に一也、あたしは後ろに。

「可南、高速乗ったらシートベルトな。おトイレは早めに言いなよ? 渋滞するから」

 こういう時なんでか一也は“お母さん”ぽくなる。不思議。
 
「ね、一也。こないだみたいに寄り道しながら行くのダメなの?」

 間から乗り出すようにしてあたしが顔を覗かせると、間近で振り返った一也は困ったように笑んだ。

「渋滞が分かんないだろ?」

「夕方までに着けばいいんだから、どうにでもなるよ」

 千也がのほほんとして言ったのを一也が溜め息で返す。

「・・・千也はアバウトすぎなんだよ」

 一也は冷めてる割りに生真面目で。
 千也はいい加減そうで、気配りの人。
 似てないようで似てる兄弟。
 あたしの大事な二人。 

 この旅行がすごく楽しみで、今朝もすごく早く目が冴えちゃって。3人で出かけるのがこんなにワクワクするなんて。天気も上々で心底、最高な気分。

「ハイハイ、二人だけで盛り上がるの禁止ー。あたしを置いてきぼりにしないでよ?」

『しないよ』

 ユニゾン。見事にハモった。
 仲いいねぇ?



< 45 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop