幾千夜、花が散るとも
 件(くだん)の高級リゾートホテルに辿り着いたのは、夕方の5時を回った頃。川のほとりに建つ森の中の邸園とでも言うか。プライベート性を重視したこのデザイナーズホテルは、一部屋あたりのスペースが半端なく広かった。

 ゆったりしたソファが置かれたサンルームに、デッキチェア付きの専用テラス。ミニキッチンにランドリールームまであって、まるでコテージ感覚。ガラス張りで、景色を見ながら三人一緒でも入れそうな大きな円形のバスタブだとか、ナニこれってぐらい揃ったアメニティの数々だとかに感動すら。

 コドモみたいに一也を連れてホテル内を探検。宿泊客はやっぱり年齢層も高めで、流れてる空気が静かで落ち着いてる。
 自然との一体感ていうコンセプトで設計されてて、エントランスも通路も大きなガラス張り。爽やかな新緑や川面がどこからともなく目に入る。とっても上質な空間。棚ボタに感謝。

 ただ部屋が、元は二人で来るハズだったからツインのままで。エキストラベッドも入るみたいだけど、くっついたセミダブル2つに三人で寝られるようにしてもらった。

 それからホテル内のフレンチレストランで夕食。男性はジャケット着用・・・ぐらいの軽いドレスコードがあったから二人はカチッと目に着替えて。あたしも黒のエレガント風味なワンピースドレスでおめかし。
 一也と恋人繋ぎして、千也に腕を絡ませ入ってくと、案内係の年配男性の視線が一瞬固まってた。そりゃそーだよね、兄妹に見えないし。
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