幾千夜、花が散るとも
 ホテルを後にして。途中でワイナリーに寄り道したり、行く先々で千也と一也からの溺愛っぷりを堂々とひけらかして歩ったり。

 お酒とか食べ物ばっかりの、お土産積んで家に帰って来た時。夢見心地だった気分を自分からゆっくりと手放してく。
 だってあたしの楽園はここ。車が縦にやっと二台置けて、猫の額くらいの庭しかないこの家が。紛れもなく最後の楽園。千也と一也と、二人の子供たちとで生きてくあたしの。






「可南、風呂は一緒に入った方が効率いいって知ってる?」

 その晩からガス代のコスト削減を切り札に、一也は涼しい顔であたしもお風呂に引っ張ってくようになった。

 “温泉効果”がナンか違う方向に行ってる気がするよ、一也?





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