幾千夜、花が散るとも
 千也と一也と。言葉じゃ尽くせないキモチを眼差しで交わし合って。二人の姿を瞼の奥にキュッと焼き付けた。

「・・・もう俺は弟じゃないよ、可南」

 一也は二人の写真を撮る前にあたしの手を握りじっと見つめて、周りに聴こえないぐらいの低い声でそう云った。

 千也はやんわり笑って。

「カナ・・・幸せ?」

 あたしが満面の笑みで頷くと。

「オレも生きてて一番」

 優しく囁き、そのまま耳元にそっと口付けた。
 スタッフさんは微笑ましそうに仲睦まじい兄妹を見守ってたっけ。





 秘密の結婚は写真の中でだけ。現実は何も変わりはしないけど。
 
 誰より愛してる、千也。
 心から愛してる、一也。

 あたしはこの愛以外なにも要らない。
 この愛を守れたらいい。
 セカイの片隅で誰にも迷惑なんかかけたりしない。
 ただ愛してくだけ。
 誰も邪魔しないで。放っておいて。
 
 それぐらいの望み、神サマはきっと叶えてくれる。

 二人の花婿に手を取られこの上ない愛おしさに包まれながら。あたしはカメラに向かって微笑んだ。




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