幾千夜、花が散るとも
10章
 安定期に入って身体も楽になり、体重を増やしすぎないようにとか散歩したりとか。今はお腹の中の赤ちゃんをゆっくり育んでる最中だ。
 千也が一日中いてくれる毎日は安心できて穏やかで、期間限定なのがかなり残念。10月に入ってからお店のコトで打ち合わせがあるらしく時々留守にするけど、ほとんどの時間を千也はあたしと一緒に過ごしてくれる。
 おかげで一也の独占欲がぶり返した、前にも増して。会社が休みの日は、その前の夜からべったりと離れなくなったし、甘えん坊だった子があたしへの保護欲が激しくなったとゆーか。あれするな、これしろと、キレイな顔であたしを黙らせるようになった。

『あたしの方がお姉ちゃんなのに』

 溜め息吐くと。

『可南をそう思ったことなんか一度もないよ』

 冷たく云われる。





「俺は可南のなに?」

 一也は最近、難しいコトを訊く。
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