幾千夜、花が散るとも
「カナの喜ぶカオ見てるのがいちばん好きだから。何でもしてあげる」

 どうしてもナニかしたくてしょうがないらしい。あたしは頭をひねる。しばらく考えた挙句。

「・・・じゃあねぇ、千也のしたいコトに付き合いたい」

 どうよ?

「そう来たかぁ」

 ハムエッグの最後の一口を飲み込んでから千也も思案顔。それからちょっと真面目な顔付きになって、あたしを見た。

「このごろ一緒に寝てないし、ホテルでゆっくりカナを可愛がりたい」

 全く思いがけない方向からの直球だったから。瞬きを二度三度。・・・えぇと、つまり。

「・・・えっと、でもあれだよ? できなくは無いけどゴムつけてとか、激しいのはムリとか色々あるよ・・・?」

 妊娠中のセックスは安定期に入ればダメってコトは無いらしい。

「ん、分かってる。・・・大事に抱くよ」

 つわりが始まってから二人寝だと気も遣うし却ってストレスになるかと、ずっと一人寝をしてた。ダブルベッドくらい大きかったら一緒でも楽なんだろうけど。

 千也はあたしを見つめてやんわり笑んだ。アレかな・・・ガマンさせちゃってたのかな。申し訳なかったよーな、気恥ずかしいような。

「・・・でもあたしもウレシイ、・・・かな」

 ちょっと照れて笑い返した。


 
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