幾千夜、花が散るとも
 千也の体温と素肌の感触が心地よくって。うたた寝しちゃった後、もう一回、優しく抱いてもらって。あたしの名前を呼ぶ甘くて切ない声も息遣いも、感じる千也の全部がたまらなく愛しかった。

 カナ、愛してる。

 妊娠が分かって初めて言ってくれたその言葉を。百年分、聴いたかなってぐらい耳元に注がれた。

 あたしも。・・・愛してる。すき、あいしてる、千也。

 途切れ途切れに何度もそう応えて想いを返す。



 千也は微笑んでた。

 いつだってそうだった。





 だから今も。笑った顔しか・・・思い出せない。





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