幾千夜、花が散るとも
 ウチのお風呂じゃちょっと狭いけど、背中から抱っこされるみたいに一也とお湯に浸かる。ドライヤーで髪を乾かしてもらって、オムレツ作ってもらって。食べたら急に睡魔に襲われた。 
 ちょっと狭いけど一也のベッドで二人で眠り。ふと目覚めたらもう陽も傾きかけてた。隣りでまだ一也は寝入ってる。

 二人きりだ、これから。
 
 ともすると千也がいない現実に心が折れそうになる。涙が勝手に零れる。あんなに泣いたのにまだ出るの。

 千也。
 千也。
 ねぇどこにいるの。どこ行っちゃったの。
 あたしを置いてくなんて。この子も置いてくなんて。
 あたしのコトが一番大事な千也がなんでいなくなっちゃうの。
 なんで帰ってこないの。何があったの・・・!

 考えても考えても分からない。思いもしなかった、こんな事になるなんて。やり場のない苦しみ、痛み、軋み。口惜しさ、怒り。
 
 ・・・・・・ああ駄目だ、この子にそんなモノ教えちゃ。



 もがく。・・・懸命にあえぐ。果てない闇に希望(すくい)を求めて。今はまだそれが精一杯だった。



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