幾千夜、花が散るとも
 千也が自分と引き換えに子供を・・・?
 一也の言葉をぼんやりと受け止めながら。そうだったんだって思えてしまうあたしは。千也のあの儚い笑顔にずっと秘められてたナニかを、知らずに感じ取ってたのかも知れない。
 あたしの誕生日に子供を欲しがった千也。ゴールデンウイークの旅行の時は一也との子を兄妹に欲しいって言った。

 あの時にはもういなくなるつもりだった・・・・・・? 

 記憶を手繰って巻き戻す。じゃあ二ヶ月の間ずっとあたしの傍にいてくれたのは。結婚しようって言ったのは。写真を撮ったのは。ホテルであたしを抱いてくれたのは。いなくなるのを決めたから?

 この子を残してけば大丈夫って思った?
 自分がいなくても平気って?
 千也の代わりになるって?
 
 オレを忘れろとでも言うつもりなの。
 帰って来ないつもりなの。
 追うなって言うの。
 待つなって言うの。
 
 ねぇなんか言って。
 ちゃんと言ってよ千也。
 なんでいつも一人でぜんぶ抱え込んじゃうの。
 なんで。
 最後まで笑って黙って行くの。


「・・・・・・ひどい男・・・」

 あたしは泣きながら笑ってた。
 それから声を上げて一也の胸でわんわん泣いた。


< 81 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop