幾千夜、花が散るとも
「・・・かなぁ」
心細げな十也の声が聴こえてあたしは我に返り。千也が差し出したハンカチで急いで涙を拭く。振り向いてかがむと、泣き腫らした顔で笑顔を作った。
「ごめんね十也。・・・あのね、千也が帰って来たの」
「せんや?」
十也は後ろに立ってる大きな大人を不思議そうに見上げた。子供に事情が分かるハズもない。でもあたしは構わず続ける。
「そうだよ、かながずっと待ってた人。だから一緒に帰って一緒にケーキも食べるんだよ?」
あたしが嬉しそうに笑ったから安心したのか、十也もにこりと頷く。
「じゃあ十也、肩車してあげよっか」
千也はあたしに花束を手渡すと、軽々と十也を抱き上げ肩に乗せた。
「三歳児は重いよ? 無理しないでね」
「大丈夫。オレ案外タフだから」
クスリとする千也。・・・知ってるってば。あたしもクスリ。
「たかーいっ」
はしゃぐ子供を肩に、空いてる手はしっかりとあたしを掴まえて家に向かって歩き出す。
「・・・あっ、一也に言わなきゃっっ」
それも頭が回らなかったぐらい。千也がここにいるのが現実なのか、まだ夢見心地な気分だった。
「大丈夫だよ一也は。帰って驚かせば」
そんな呑気なコトを言ってる千也は。髪は黒くて、長くも短くもない長さに整えられてて。前髪は少し斜めに流し、何ていうか。ワイルド系の美男子だったのが、スーツの似合うエリート
系美男子ぽい。
前より肌が焼けたかなって男っぽさも増してる。横顔にぼうっと見惚れてたら。
「しまったぁ」
千也が唐突に言う。
「カナにキスしてから肩車するんだった」
何てゆーか。訊きたいコトとか、それこそもう山のようにあって。有りすぎて整理しきれないから困ってるぐらいなのに。千也はぜんぜん変わってもなくって思わず吹き出した。
「・・・後でいっぱいすれば?」
「キスじゃないのも、いっぱいするよ?」
涼しそうな声。
「せんや、かなとちゅーするの? ぼくも、りなにするしねぇ、いちやも、かなにちゅーする」
十也の無邪気なお喋りに千也が真面目に答える。
「うん。これから毎日毎晩、カナとする」
「かなねぇ、いっつもちゅーするんだよ」
「んー?」
「おひめさまのしゃしんに、いっつも」
「お姫サマ?」
「うん! ダイスキなんだって!」
子供ってほんと、親のするコト良く見てるなぁ。照れ笑いと苦笑いが半分半分の顔で千也と目が合った。
おはようとおやすみ、行ってくる、ただいまを言って、結婚写真の千也にキスする習慣。だってダンナサマなんだし。
「・・・そっかぁ、じゃあ同んなじだねぇ。オレも毎日、オレの可愛いお姫様にキスしてた」
言って十也をいったん下に降ろすと。千也はこっちに向き直って、片手であたしの肩に腕を回し引き寄せた。
「・・・愛してるカナ」
唇に熱い吐息が重なる寸前に低く囁かれる。人目もはばからずあたし達は長い長いキスを交わした。
「ねぇ、まだぁ?」
十也に可愛く急かされるまで。
心細げな十也の声が聴こえてあたしは我に返り。千也が差し出したハンカチで急いで涙を拭く。振り向いてかがむと、泣き腫らした顔で笑顔を作った。
「ごめんね十也。・・・あのね、千也が帰って来たの」
「せんや?」
十也は後ろに立ってる大きな大人を不思議そうに見上げた。子供に事情が分かるハズもない。でもあたしは構わず続ける。
「そうだよ、かながずっと待ってた人。だから一緒に帰って一緒にケーキも食べるんだよ?」
あたしが嬉しそうに笑ったから安心したのか、十也もにこりと頷く。
「じゃあ十也、肩車してあげよっか」
千也はあたしに花束を手渡すと、軽々と十也を抱き上げ肩に乗せた。
「三歳児は重いよ? 無理しないでね」
「大丈夫。オレ案外タフだから」
クスリとする千也。・・・知ってるってば。あたしもクスリ。
「たかーいっ」
はしゃぐ子供を肩に、空いてる手はしっかりとあたしを掴まえて家に向かって歩き出す。
「・・・あっ、一也に言わなきゃっっ」
それも頭が回らなかったぐらい。千也がここにいるのが現実なのか、まだ夢見心地な気分だった。
「大丈夫だよ一也は。帰って驚かせば」
そんな呑気なコトを言ってる千也は。髪は黒くて、長くも短くもない長さに整えられてて。前髪は少し斜めに流し、何ていうか。ワイルド系の美男子だったのが、スーツの似合うエリート
系美男子ぽい。
前より肌が焼けたかなって男っぽさも増してる。横顔にぼうっと見惚れてたら。
「しまったぁ」
千也が唐突に言う。
「カナにキスしてから肩車するんだった」
何てゆーか。訊きたいコトとか、それこそもう山のようにあって。有りすぎて整理しきれないから困ってるぐらいなのに。千也はぜんぜん変わってもなくって思わず吹き出した。
「・・・後でいっぱいすれば?」
「キスじゃないのも、いっぱいするよ?」
涼しそうな声。
「せんや、かなとちゅーするの? ぼくも、りなにするしねぇ、いちやも、かなにちゅーする」
十也の無邪気なお喋りに千也が真面目に答える。
「うん。これから毎日毎晩、カナとする」
「かなねぇ、いっつもちゅーするんだよ」
「んー?」
「おひめさまのしゃしんに、いっつも」
「お姫サマ?」
「うん! ダイスキなんだって!」
子供ってほんと、親のするコト良く見てるなぁ。照れ笑いと苦笑いが半分半分の顔で千也と目が合った。
おはようとおやすみ、行ってくる、ただいまを言って、結婚写真の千也にキスする習慣。だってダンナサマなんだし。
「・・・そっかぁ、じゃあ同んなじだねぇ。オレも毎日、オレの可愛いお姫様にキスしてた」
言って十也をいったん下に降ろすと。千也はこっちに向き直って、片手であたしの肩に腕を回し引き寄せた。
「・・・愛してるカナ」
唇に熱い吐息が重なる寸前に低く囁かれる。人目もはばからずあたし達は長い長いキスを交わした。
「ねぇ、まだぁ?」
十也に可愛く急かされるまで。