僕はただのbarのオーナーです




「素のお前は昔から分かり易いんだけどな。
お前、今色々とふっきれてるだろ。」


『なんかね。
隠してたこととか、抱えてたこととか。

全部言ったら楽になった。』





そう言って笑うと、翼は本気で驚いた顔をした。




『なに?』


「いや、お前の心からの笑顔っての。
久しぶりに見たな、と思ってさ。」


『んー、そう?』





自分じゃわからない。
どんな風に笑ってるかとか、どんな風な表情してるかとか。

それでも馬鹿みたいに笑ってたあの頃みたいな気持ちなのは確かだったりする。


敬語は周りを拒絶するため。
一人称は己を抑えるため。
偽りは周りを騙すため。

〝俺〟は人を貶める
〝私〟は人を遠ざける

〝僕〟は人を引き寄せる
何も知らず笑い、何も知らずはしゃぎ、何も知らず幸せだった。


偽りなんかなくて、何も気にせずいれる僕は。

本来、僕が望んだ自分。
今更なにを?って思うかな‥‥‥‥。

だけど、隠してたこと。
抱えてたこと。

全部言ったら、楽になった。
なんか、軽くなったんだ。


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