僕はただのbarのオーナーです
翼side
かろうじて急所を外してるとはいえ、脇腹をぶち抜かれてなおいつもと変わらない動きをしている澪。
銃口が澪たちに向いたとき、澪は何の躊躇いもなく念の為に持っている2本の短剣に手をかけた。
一瞬で相手との距離を詰め、“相手の拳銃をたたっ切る”なんて誰が予想しただろう。
怪我というハンデを背負ってなお、澪の方が優勢だった。
相手は武器なし。
それでも食いついているところから、相手が武器を持っていたら今の澪じゃ負けてたんだろう。
けど、俺たちの世界は運と実力。
相手にいくら実力があったとしても、運が当たったのは澪だ。
「これで終わりだ。
崩れ落ちる玉座で果てろ、KINGっ!!」
人を切る独特の音と、臭い。
汐と零さんの視覚を遮り、とっさに汐の耳を塞いだ。
この後、惨劇の状況を見ることになるとしても。
澪が殺るところは見せたくなかった。
「翼。もういいよ。」
『澪‥‥。』
返り血と自身の血で濡れた澪。
困ったように笑ってる澪になんて声をかけたらいいか分からない。
何年も一緒にいるのに、こんな澪を見るのは初めてだったから。