僕はただのbarのオーナーです
「お、雫石さん。なに?高校生に絡まれてんの?」
『おや、お久しぶりですね。壱条-ichijou-さん。絡まれてるとは人聞きの悪い。ただ話してただけですよ。』
急に湧いて出てきたこの人は壱条 要-ichijou kaname-さん。
確か有名な組に入ってて、元銀楼の幹部メンバーだったとか。
壱条さんは僕のことを知っています。
僕が高校生だということも、私が銀楼であることも。
そして、〝俺〟の過去でさえも。
そもそも、この職をする事になったきっかけ…いえ、元凶ですので。
僕を雫石と呼び始めたのも、この店の名前を決めたのも、昼間勝手にカフェをしているのも、全て壱条さんです。
暇なのでしょうか?
まあ、それだけ気に入られてるという方が正しいのでしょうが。
『壱条さんがいらっしゃるということは、また面倒ごとを抱えておいでですか?』
銀楼の現幹部メンバーが壱条さんの登場に驚いている中、淡々と会話をすすめます。
僕はただのbarのオーナーです。
今はそれ以上にも以下にもなる気はありません。
しかし、仮に。
壱条さんの頼みならば、僕は僕としてここにいるわけにはいきません。
と言っても、銀楼現幹部メンバーの前で僕自身を捨てることも出来ないのですが…。