僕はただのbarのオーナーです
「澪、そろそろ行かねぇと俺らを心配してる奴らもいるし。」
『分かってますよ。』
翼の言葉で立ち上がって、親子に背を向ける。
「元気な子供、生まれるといいねー!」
『翼、行きますよ』
「へいへい。」
いつまでも親子に手を振っていた翼を軽く小突いて汐たちのもとへ行きます。
まあ、小言を頂いたのですが、振り返って見た親子の笑顔が素敵だったのでよしといたしましょう。
なぜ私たちが迷わず飛び込んで助けたのか?
そんなの決まってるじゃないですか。
ただ………………
『「羨ましい」』
「お、おんなじこと思った?」
『その様ですね。』
ただ、羨ましかっただけ。
表で思い切り笑ってるあの子達が。
失いたくなかっただけ。
あのひだまりの笑顔を。
それは、俺たちがいつの間にか
失ったものだから。