うたかた花火
私は、今から16年前ある病名を告げられた。



『心房中隔欠損症』


聴いたことなければ、どんな病気なんて分からなかった。



むしろ、私は当時まだ赤ちゃんで命の危機に立たされていたことなんて理解できるはずもなかった。



私の両親は、私に先天性の疾患があることを聞いて、育てる自信が失われたことと、私の死を受け入れることができないという理由で、私を赤ちゃんポストに預けたそうだ。




両親は、できるだけ私に感情移入をしないようにと、私が生まれてから1度も会うことはなかったという。





だから、私も両親に対しての感情は何も無い。





私を、娘のように今までずっと育ててくれた先生にしか、両親と同様の感情を抱いていない。







先生は、赤ちゃんポストに預かられた私を気の毒に思ったのか、私を引き取ってくれた。






それが、たとえ同情だったとしても今は感謝をしている。





先生がいなかったら、私は愛情を注がれることなく育った。





きっと、私は屈折していたに違いない。






そう考えると、たまらなく怖い。





先生や、先生の家族に私はまだお礼が出来ていない。





だからこそ、私はまだまだ生きていかないといけないんだ。





「榛菜、今日はもうベッドに寝なさい。




明日からまた早いんだから。」





先生はそう言葉にしてから私の承知を得ることなく私を姫抱きにした。






私は、ここ最近こうして先生にベッドまで運んでもらうことが多くなった。





病気が悪化しているわけではないみたいだが、23時を過ぎたころからいつもこのように足の力が抜け立てなくなってしまうことがある。







理由はよく分からなくて、先生も分かっていない。





それでも先生はこんな風に私のことを支えてくれている。







「先生、明日はいつも通りの時間にしようかな…。



少しだけ、苦しくて…。」






「ちょっと、胸の音聴いてもいいかな?」





先生はそう言葉にして私の服の中に聴診器を入れ真剣なまなざしで何かを聞いている。






いつもされていることなのに、何を聞いているかとか私は知らない。




高校生になった今も、私は自分のことをちゃんと理解していない。





これから、私はどう生きるのか…。




どう死んでいくのか…。





大人に近くて、大人になれきれなくて。





16歳って、本当中途半端な年齢だ。






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