同僚は副社長様
……いい加減、こんな小学生みたいな片想いには区切りをつけないといけないのかもしれない、と本気で最近考え始めていた。
ここ7年、彼の口から出る情熱的な言葉はすべて、杏奈さんに向けられたものばかり。
それでも諦められなかった恋心。
そう簡単になかったことにはできないとはわかっている。
だけど、彼のように私も一歩踏み出さないと、前に進めない気がした。
(告白は、したくない。)
7年の片想いに終わりを告げる最後の最後まで、私は彼に告白などしない。
彼が気付かないうちに芽吹いてしまった恋心は、彼に知られることなく、摘んでしまおう。
それがきっと、彼と良い関係を築いていける最善の方法。彼の部下としても、同僚としても。それ以上でも以下でもない、関係を。
ベッドシーツや溜まった衣類を放り投げた洗濯機を回していると、私のスマホの着信音が室内に鳴り響いた。
こんな時間に誰だろうと画面を見れば、営業部で良き仲間だった凪子からだった。
「もしもし」
『あ、美都?』
電話に出ると、ちょっと切羽詰まったような凪子の声が聞こえた。
こんな休日に電話なんて、急用だろうか。
「うん、どうしたの?」
『ねね、今日の夜、暇?』
突然な誘いに、内心びっくりしてしまう。
凪子は用事がある場合は前もって連絡してくれるようなしっかりした人だから、こんな当日に予定を聞いてくること自体が珍しいのだ。