同僚は副社長様
今日は休日の日曜日。
彼氏もいない私は、1人寂しく家事をしているだけで、夜も予定がガラ空きだけれど。
でも、素直にここで頷いて良いものなのか。
ちょっとした私の警戒心を察したのか、凪子は事情を話し始めた。
『あのね、実は今夜、前に取引先の営業部と飲み会しようってことになってたんだけど、1人欠員が出ちゃって困ってるの!』
飲み会、と言えば聞こえはいいが、それがコンパだということはさすがに私でも想像がついてしまう。
瞬時に行きなくない、と思ってしまった。
「…なんでそこで、私に連絡が回ってくるの?」
凪子は私が古川くんに想いを寄せていることは知ってる。しかも、私が営業にいたのは半年前までの話だ。
しかも、その時は現場を知らない事務仕事しかしていない。
なのになぜ、私に連絡が来るのか、意味がわからない。
『取引先、藤川商事なの!覚えてるでしょ?』
藤川商事、と言われて、ピンと来る。その取引先は、私が営業部で最後に携わった案件だった。
『営業部の子も、久々に美都に会いたいって言ってるし、向こうもね、あの書類を作った人に会いたいって言ってくれてるの!』
だから来て!と興奮気味な凪子の声を聞きながら、ふと思い出した。
そう言えば、古川くんの元で働き出してボロボロになりかけだった私に、凪子が『美都が作成した書類、取引先で評判良かったわよ!自信持ちなさい!』と励ましてくれたんだっけ。
そうか、あの時の。
なんだか懐かしくて、営業部の人たちに久々に会ってみたいと、私が作った書類を褒めてくれた人にも会っていたいと思った。
「そう…じゃあ、日時と場所、教えて?」
しかも、コンパなら、新しい出会いもあるはず。
古川くんへの想いを断ち切るにはもってこいなのでは、という考えに至った私は、参加することにしたのだった。