同僚は副社長様
副社長は一流だ。
仕事に対する姿勢、取り組み方、その結果の出し方も、周りの人間への気遣いも。
全てが完璧。
毎日違う高級スーツには皺ひとつないし、靴も毎日新品を調達しているのかと思ってしまうほどピカピカで、それに引けを取らない顔面偏差値もきっと日本男児のトップクラスに入るほどお高め。
見ているだけで目の保養とはきっと、彼のことを言うのだと思う。
そんな彼に難点があるとすれば一つ。
仕事に関して完璧主義者であるということ。
それが自分にだけ向けられているのなら、それはそれで問題はない。けど、彼の場合、その概念を周りにも押し付けてしまうところがある。
そのせいで、彼の秘書になった人はいつしか身体も心も病んでしまい、短期間で彼の元から去ってしまう。
1ヶ月で3人もの秘書に逃げられた時には、彼もさすがに嫌気がさしたようで秘書はいらないと豪語したが、副社長という重役柄、秘書を1人もつけないわけにはいかないと困り果てた人事部が白羽の矢を立てたのが、なぜか私だった。
入社して7年。
ひっそりと営業部の事務仕事に精を出していた私に舞い降りた、一世一代の大出世。
最初は恐れ多いと、私なんかが役に立つはずもないと断っていたのだけれど、人事部長の目に涙が溜まっている姿を見てしまったら、これ以上首を横に振り続けるわけにもいかなくなった。
そうして配属された秘書課。
最初こそ、初めての業務に、如何せん厳しすぎる上司の元での勤務に泣きたくなった日なんて数え切れないほどあるけれど、彼にクビだと言われていない現状を見れば、どうやら私はなんとか彼の元でやっていけているらしい。
しかも、彼の元に配属になって約半年という期間が、今いる場所に対して私をちょっとだけ勇気付けていた。