同僚は副社長様



これが、古川くんへ片想いして身についた、慣れというものなのか。

それだとしたら、ますますまずい。早く、この気持ちにケリをつけなきゃ。

そうしないと、いつか私は彼に気持ちもないのに、片想いが続いていると錯覚しそうだ。それが一番怖い。


『…じゃあ、気にしなくていいってことか。』


酔っているからお酒は飲まないこと、と響くんに言われてこのお店について来た私は、彼の言った通りにウーロン茶を飲んでいたのだけれど、今の言葉はまだまだ酔いが覚めていないから聞こえた幻聴?

よく聞こえなかったし、幻聴でなかったとしても意味がわからない私は、聞かなかったことにしておこうと、ウーロン茶をグビッと飲み干す。


「響くんはいないの?結婚相手」


その代わり、すかさず私から聞き返した。

散々こっちの事情かき回しといて、自分だけ逃れようとするなんて腹立たしい。

まあ、勝手に私がかき回された気分になっただけで、響くんに悪いところなんて一つもないけど。正直、これが俗に言う『八つ当たり』と言うこともわかってはいるけど。


『さぁ、どうだろうね。』

「え、なんで濁すの」


馬鹿正直に答えた私とは打って変わって、うまく交わして来た響くんにまたムッとする。

これが営業のやり方?だとしたら、タチ悪すぎじゃない?


『ムッとする美都も可愛いな。』

「響くん、いやな感じに成長したね。」


思ってもないことをさらっと爽やかな笑顔で取り繕ってくる響くんが嫌で、思わず嫌味を返してしまった。

だって、損ねた機嫌を直すために発せられた褒め言葉なんて、響くんから欲しくないんだもの。


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