同僚は副社長様
『本気にしてないんだ。…まだまだってことかな』
…さっきから時々、響くんの言葉の意味がわからないのは私だけかな。
そのせいで、荒立つ心が少しだけ穏やかになってしまった。
『美都』
響くんって、やっぱり昔も今も、何考えているかわからないところは変わってないなと思いながらドリンクメニューを眺めだした私にかけられた優しい声。
つられて隣へ視線を向けると、昔と変わらない、でも少しだけ色っぽさが増した瞳と目があった。
『俺が美都に向ける言葉は全部ホンモノだよ。』
「……」
『だから、さっきみたいに疑わないで。悲しくなるから…信じて。』
なんだろう。
どうして、目が離せないんだろう。
どうして響くんは、そんなに真剣な眼差しで私を見つめるの?
ガラッと変わった空気感に、感じたことない甘い雰囲気に、私は動揺を隠せない。
「…うん、わかった」
『やっぱいい子だな、美都は。』
素直にうなづく私の頭上に乗せられた大きな手。
その手で、昔みたいに優しくトントンと撫でられる。
ああ、そういえば昔も、こうやって響くんに絆されてたな。と昔のことを思い出した。
私はこうやっていつも、響くんの思い通りに反応して、従順に生きてたかも。と自分自身に苦笑した。
この時、響くんが私の頭を撫でながら、どんな感情を抱いていたのか、想像もせずに。