同僚は副社長様
「杏奈さん絡み?」
心の準備が完全に整ったわけじゃないけど、自分で振っておいて、それ以上追求しないのはダメな気がして、話の核心をついてみた。
『……なんで』
「え?」
『なんで杏奈のことだって思う?』
私の問いかけに、問いかけで返してきた彼に、私はフリーズしてしまう。
何かを探るような瞳が私を射抜く。
「だっ、て…古川くん、なんだか元気がない、し…」
『元気がないのと杏奈がどうして繋がるんだよ』
「この前、杏奈さんが結婚するって言ってたから、……ごめんなさい、要らないお世話だったね」
これ以上墓穴を掘れば、古川くんの機嫌をさらに損ねるだけなような気がして、話を終わりにしようと思った。
『そんなんじゃない』
だけど、彼はそう簡単に引き下がってはくれなくて、鋭い眼光を私に向けたままだった。
『杏奈なら、来週結婚するよ』
「あ……そう、なんだ」
1ヶ月前、そのことで酷く落ち込んでいた彼にかける言葉が見当たらなくて、小さなお世辞も言えなかった。
どんな顔をして彼を見ればいいのかもわからなくて、目の前にある枝豆をチビチビ食べるしかない。