同僚は副社長様
副社長様の訪問
––そして気づけば、古川くんと約束したあの日がやってきた。
「掃除よし、料理よし、スリッパよし!あとは古川くんからの連絡を待つだけ、か」
き、緊張する…。
普段より掃除に磨きをかけたダイニングテーブルの上にスマホを置き、その目の前で背筋を伸ばしたまま古川くんの連絡を待つ。
約束の時間まで、あと3分をきっていた。
大丈夫、平常心を保つんだ、私。
社会人になって7年。男性を招き入れたことのない我が家にくる想い人が、我が家にきてどんな反応をするのかが想像できなくて、ソワソワしてしまう。
〜〜♪
「!」
聞き慣れた着信音だというのに、肩を上下させて過剰反応をしてしまうのは、その相手が古川くんだからだ。
両手でスマホを手に取り、ごくっと唾を飲み込んで、力を込めて通話ボタンのアイコンをタップした。
「…も、もしもし」
『美都?』
ああ、古川くんだ。
大好きな声が鼓膜を優しく叩いた瞬間、私の心臓は正直にキュッと引き締まる。