同僚は副社長様



「…いい匂いがする」


リビングにつながる短すぎる廊下を進むと、後ろをついてくる古川くんがポツリと呟いた。


「もうご飯はできてるの。古川くん、ちゃんとお腹すかしてきた?」


くるりと顔だけ振り返り、いたずらな微笑みを向けると、古川くんはアーモンド型の目を垂れさせて微笑み返してくれた。

スーツを身にまとっていない古川くんは完全に休日モードなのか、平日会う時よりも雰囲気や表情が柔らかい。


「ああ。やっと、美都の手料理が食べられるのに、しっかり味わえないともったいないからな」

「…そっか。いっぱい作ったから、たんと食べてね」


やっと、って言ってくれたってことは、私の手料理、本当に期待しているんだろうな。

緊張するけど、……嬉しい気持ちの方が勝つ。

リビングとダイニングが一緒になっている狭い部屋に通すと、古川くんの瞳が一気に輝いた。


「…すごいな。これ、全部を美都が?」

「そうだよ。」


テレビの前にあるローテーブルに並べられたいくつもの料理に、古川くんは釘付けだ。

卵たっぷりのマカロニサラダと、牛肉100%のハンバーグにカニクリームコロッケ、コンソメスープ、白ごはんという、古川くんが好きだと言っていた料理ばかりを用意した。

あと、何を食べたいのか本人に聞いたときにリクエストを受けた、いつも私のお弁当に入っている卵焼きも添えて。

そして、冷蔵庫には食後のデザートとして、プリンが入っている。

…古川くんって、卵料理が好きなんだよね。本人は気づいてないみたいだけど。

茶碗蒸しも作ろうかと思ったけど、それでは本当に卵料理ばかりになってしまうと、今回はやめにした。


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