同僚は副社長様
「俺がお世辞は言わない主義だって知らなかった?」
「…知ってる。けどっ」
「けども何もない。落ち着くって言ってんだから、素直に嬉しがりな」
「…ありがと」
「よくできました。美都は素直なところが可愛いんだから、気持ちを隠すのは良くないよ」
”素直なところが可愛い”
”気持ちは隠すな”
古川くんから返ってきた言葉に、私は白ごはんを口に運んだお箸を咥えたまま、固まる。
え?
ちょっと待って…古川くん今、可愛いって言った?
「ここは美都の部屋だから当たり前だけど、美都の香りがして、落ち着く」
目の前には、品格のある微笑みを浮かべる愛しい人。
何が起こっているのか分からない。
私の香りが、落ち着く?
食事を終えた彼から溢れる言葉たちはどれも、私にとっては寝耳に水なものばかりで。
私はロボットのようにフリーズするしかない。
「…女子の部屋なんて、こんな匂いじゃない?」
「どうかな」
どうかなって。
今、私の言葉を柔らかく否定した。
他人様の部屋なんて多く訪れた経験なんてないけど、自分が特別、部屋の香りに気を使っているわけでもないから、彼の落ち着く要素が分からなくて、どう反応していいのか困ってしまう。