同僚は副社長様



「美都の香りって、なんかいいんだよね」

「そ、れは…ミント系の香りが好きだから、そう感じるのかもね」


香りの話なんて、恥ずかしすぎる。

自分じゃ全く気にも留めていなかったところを刺激されて、ドギマギする。

部屋の清潔さとか、家具のセンスとか、物の置き方とかばかりに気を使っていたのに、彼が反応したのは私の部屋の香り。

確かに、人間にとって嗅覚の相性は大事だけど。


「ミントか、美都らしいかもね。だけど、それだけじゃない」

「どういうこと?」

「それよりも、美都のお箸止まってるよ。早く食べて」


プリン食べたい、といきなり話の方向を戻されて、私はむぅっと膨れる。

さっきまで、私のペースで食べていいって言ったのに。


「そんな可愛い顔して反抗してもダメ。」

「なっ…」


本当に、今日の古川くんはどうしたんだろう。

斜めになりかけた私の機嫌を上々させることには成功しているけど、それ以上に私の心を今まで以上に鷲掴みにしている。

昨日の昨日まで、こんな甘い言葉、一度だって私に言ったことなんてなかったのに。

やっぱり、失恋の傷が癒えないせいで、古川くんは頭のネジを一本、とは言わずに10本くらいどこかに置いてきちゃったんじゃないだろうか。


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