同僚は副社長様
「古川くん、なんか変」
思ったことをそのまま言ってしまう私も、今日はお口に締まりがないみたいだ。
何かおかしなものでも口にしちゃったんだろうかと思うほどの、古川くんの変貌ぶりに、私まで調子が狂ってしまっているのかも。
「変?そうかな、そうでもないと思うけど」
これは、本人は全然気付いてないみたい。
私の言葉なんてサラリと交わすところは、これまで古川くんと同じ。
それなのにいつもと感じが違うと思ってならないのは、彼が身に纏う休日仕様の普段と違う甘さのせいだろうか。
「しいて言えば、美都に絆されたからかな」
「はい?」
やっぱり。休日の古川くんは糖度が上がっているようだ。
こんなこと、言う人じゃなかったのに。
いや、私が知らなかっただけで、普段の古川くんはこんな風にフルーツ系男子なのかも。
…杏奈さんの前でも、こんな感じだったのかな。
だとしたら、妬いてしまう。可愛いやら、落ち着くやら、こんなこと言われたなら、こっちだって絆される。
「…そんなに褒めても、冷蔵庫から出てくるのはプリンだけなんだからね」
「全く、俺への餌付けは完璧だよね」
ああ、もう降参だと言いたい気分だ。
今日の古川くんとは、まともに会話が成立しそうにない。
既に、昨日までの古川くんとはどんな会話をしていたか、忘れかけている。