同僚は副社長様
「美都に折り入って話がある」
数分後、やっとの思いでご飯を食べ終え、食後のデザートに移った私に、古川くんはプリンを食べながら口を開いた。
プリンから視線を上げると、目の前にはどことなく緊張気味な古川くんと目があった。
折り入って?
そんな堅苦しい言い方をするなんて、何かあったんだろうか。
何かを察した私は、スプーンをプリンの淵においた。
「どうしたの?」
「今日、美都の料理を食べて、改めて思ったんだ」
「うん?」
「これから、俺の食生活の面倒を見てもらえないかな」
え…?
想像を超えた彼の話に、私は空いた口が塞がらない。
てっきり、今日の料理が美味しかったとか、料理の感想を言ってくれるんだろうと思っていただけに、こんな頼み事をされるとは。
突然のことでなんて反応すればいいのかわからずフリーズしていると、古川くんは途端に不安の色を濃くした表情に変わる。
「やっぱり、嫌だと思った?」
「へっ、いや、あのっ……なんていうか、なんで、いきなり?」
副社長ともあろう古川くんなら、家政婦やらハウスキーパーやら、お金に物を言わせて身の回りの世話をしてくれる人を雇うことなんて簡単だろうに。
どうして、栄養面の資格もとっていない、ただの料理好きの私なんかに頼むのか、訳がわからなかった。