同僚は副社長様
副社長のお世話係
翌日の月曜日
「お待たせいたしました」
香りたつ淹れたてのコーヒーを副社長に差し出しながら、午前の業務時間を終えたことを告げる。
利き手側に置かれたコーヒーカップを視界に入れたと同時に、副社長はPCのディスプレイをブラックアウトした。
オンとオフの境界線をはっきりと線引きするところは、どんなに仕事が立て込んでいても変わらない。
「美都、ランチにしよう」
今までも、こんな風に私をランチに誘うことは稀なことではなかった。
けれど、副社長の誘いにこれまで以上に緊張が背中を駆け抜けたのは、その誘いが私が作ってきたお弁当を期待しての言葉であることを知っているから。
昨日、副社長の食事面のサポートを頼まれ、それは早速今日から体現されている。
デザート食べながら、しきりに「翌日からよろしく」って言われたことを思い出し、素直に自分用とともに副社長用のお弁当も作ってきた私。
食事面のサポート役に任命されてすぐ、副社長の苦手な食べ物と嫌いな食べ物を聞きとり、早速お弁当作りに活かした私。
副社長の誘いに頷き、私は自分のデスクの横にかけていたお弁当二つを手に取った。
「場所を移しますか?」
「そうだな…俺は構わないけど」
少し考えたような素振りをしたにも関わらず、言葉を濁して私を見つめれくる副社長に首を傾げる。
普段、こんなことで悩んだりしない人なのに。