同僚は副社長様



タコワサを咀嚼しながら思う。

彼のそばで、どんなに仕事がきつくても頑張れるのは、なんていったって彼のためだ。


彼のためなら、夜遅くまで残業が続くのだって耐えられる。

その気持ちは、私はもうとっくの昔から認めている感情だった。


私は、古川 秋斗にずっと昔から恋をしている。

仕事に関しては冷徹な顔しか見せてくれないのに、同僚の顔になると途端に人間らしくなる。

そんな彼を尊敬していた私はいつの日か、彼に恋い焦がれるようになってしまった。

だけど、これは彼にとっては要らない感情だ。


私の心の底にある、『貴方のために仕事頑張ったの』なんて本音は、彼にとってみれば迷惑以外、何物でもない。

それがわかっているから。


「気にしないで、会社のためだもん。」


私はいつものように自分の心に嘘をつく。

ニッコリと笑顔ではっきりと告げる私に、古川くんは苦笑した。


「…何よ?」


人の顔見て笑うなんて、失礼ね。

ちょっといじけて見せると、彼はごめんごめんと謝ってくれるけど、顔は笑ったまま。

反省してないことなんてお見通しなんだからね。


『いやだって、このままだと美都、会社と結婚しそうだからさ。』


そう悪びれもなく、彼は言う。


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