同僚は副社長様
秘書に接近する恋敵
『偽の婚約者役を頼まれたぁ!?』
「ちょっ…芽衣!声が大きい!」
太陽が真上に登った土曜の午後。
芽衣の結婚式の受付を依頼され、その打ち合わせにやってきたカフェで、先日の出来事を話した私は、あまりにも大声で反応した芽衣を諌めた。
「ごめんごめん。まるで漫画のようなことを美都の口から聞いたから驚いちゃって。…妄想じゃないよね?」
「芽衣、ひどい…。いくら片想いが7年目に突入したからって、こんなこと妄想で親友に話すわけないじゃない」
「…そうだよね。それに美都は超がつくほどの現実主義者だし」
そう言って、アイスコーヒーを嗜む芽衣は、どこか楽しげだ。
「それで?」
「え?」
「もちろん、OKしたんだよね?」
本当は、こんなデリケートな話、会社のトップシークレットに匹敵するような話を、友人に話すべきではないのかも知れない。
あの時、私がした選択は正しかったのか、ここ最近ずっと悩んでいた。
その答えは1人では見えず、私が古川くんに恋愛感情を抱いていることを唯一知っている芽衣にとうとう打ち明けたわけだが。
「は…?まさか、断ったの?」
さすが親友。
肯定も否定もせずに俯く私の反応を見て、私がした選択を見抜いた彼女は眉間に皺を寄せた。