同僚は副社長様
「美都?俺の顔になんかついてる?」
「へっ…あ、いや」
「はっ、は〜ん?見惚れてたな?イケメンだもんね、うちの兄貴」
違う!と咄嗟に否定しようとして、頭ごなしに首を振ると響くんに失礼じゃ、と思った私は、羞恥心で顔を赤くして俯くしかなかった。
「何、この反応。可愛すぎだろう」
「美都はウブなの。そこらへんのスレた女と一緒にしないでよね」
「はいはい」
「あ、あのっ!どうしてここに、響くんが?!」
これ以上、私の羞恥心を煽る会話を展開させたくなくて、若干声のボリュームを大きめにして会話の方向を別に向けた。
「ん?芽衣、俺が来ること美都に言ってなかったのか?」
「サプライズ成功ね!」
してやったり顔を隠しもしない芽衣に、響くんはヤレヤレと呆れ顔だ。
芽衣は昔からお茶目な悪戯をするけど、いつも響くんは怒りもせず苦笑い溢してたっけ。
さすがに度が過ぎたイタズラをしたときは、芽衣を叱っていたけど。
その時も今も、面倒見の良いお兄さんな響くんは健在なようだ。
「今日、俺が呼び出されたのは、美都と同じ理由だと思うよ」
「え、同じって…芽衣の結婚式の受付のこと?響くんもするの?」
「そうよ、頼れる兄貴と親友に、新婦側の招待客の受付を任せたくってね」
てっきり1人でこなすものかと思っていたけど、まさか響くんと一緒とは。
結婚式に参加すること自体、片手で数える程度なのに、受付なんて1人でできるか不安だっただけに、少し安堵した。
「全く、相変わらず人遣いが荒いんだよ」
「だってしょうがないじゃん。招待客は少なくするけど、美都一人じゃ可哀想だし。兄貴なら、美都のこともフォローしてくれるでしょ?」
「俺も結婚式の受付なんてやったことないっつーの。ま、美都のためなら引き受けるけど」
「ちょっと?そこは妹のためって言ってくれない?」
昔のように軽口を叩きながら戯れあう兄妹の姿が微笑ましい。
私は一人っ子だからか、いつもこの二人のやりとりを側で聞きながら憧れていたっけ。
こんなお兄ちゃん、欲しかったなってね。