同僚は副社長様
「だって、ま…実の所さ、もう想定の予算超えちゃってて。本当は動画もプロの専門業者に頼もうと思ったんだけど、金銭的に厳しいから、こうして二人に頼むしかないの。一生のお願い!」
バチン!と大きな音を立てて手を合わせて、土下座しそうな勢いな芽衣を前に、首を横に振れなくなる。
隣の響くんはまだ納得がいかないようで不満げな顔をしているけど、私は一世一代の大イベントを成功させようとしている親友の気持ちに応えたいという気持ちの方が大きくなっていた。
「予算って、お前の旦那は」
「わかった、やる」
芽衣の結婚式まであと3ヶ月。
やれる時間はとても限られている中で、仕事をしながら休日返上で準備しなきゃいけないスパルタな毎日が待っているとわかっていても、芽衣の力になりたい。
その気持ちが生まれたと同時に、響くんの言葉を遮ってまで首を縦に振った。
私が抵抗なく受け入れたことに響くんはもちろん、提案者の芽衣までも想像していなかったようで、二人ともポカンと口を開けている。
「いいの?美都。私が言うのもなんだけど、結構なハードスケジュールだよ」
「うん、それでも芽衣が悔いのない結婚式になるように、私ができることは一緒に頑張りたい。協力したいって思うから。やるよ、私。響くんにも…負担をかけちゃうと思うけど。ごめんね」
「美都に頼まれたら断らないさ。謝るなよ、そういう美都の優しい心、変わっていなくて俺は嬉しい」
私がやるといえば、響くんだって断りにくい。道連れにしてしまうとわかっていたから申し訳なく思っていると、響くんは優しい微笑みを返してくれた。
まるで、私の選択は間違っていないと後押しするかのように、私のやることに協力すると、手を差し伸べるかのように。