さすれば恋となる
緋衣呂君が家まで送ってくれた。
とは言え3LDKのマンションで4階。
なかなかいい住まいだ。
私の部屋ももちろんある。
「 ここなんだ、叔父さんと住んでるの 」
「 二人きり?」
「 うん 」
「 そっか、じゃあまたな 」
「 ありがとね。次は緋衣呂君家にお邪魔したいな 」
ピシッと顔が引きつったように見えた緋衣呂君。
苦笑しながら手をヒラヒラと、私は帰っていく緋衣呂君の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
この日、叔父さんが帰ってきたのは11時頃。
冷蔵庫から冷えたビールを渡すと一気に飲んでいい顔をする。
「 詩乃の彼氏って、どうだ?」
「 どうって? 優しいよ~ あ、でも犬が苦手みたい、新しい発見でちょっと嬉しいかも 」
こうやって、知らない一面を見ながら恋するんだね。
ゆっくりね、一つずつね。
「 …優しいだけじゃないだろ 」
「 え、何?」
「 いや、つまみあるか? 」
「 あるよ~ 」
男は優しいだけじゃダメ、私はそう解釈したが 叔父さんはそうではない様子。
叔父さんの心はわからない。