さすれば恋となる
緋衣呂君が私を見つめながらクスッと笑った。
隣で見ている相瀬さんがなぜか照れる。
そして咳払いした相瀬さん。
「 緋衣呂君… 」
「 詩乃、早く帰れ 」
え?
ちょっと、え?
今の笑顔で言うの?
「 相瀬も詩乃と帰って 」
緋衣呂君に言われては帰るしかなく、沈みぎみに池沢家を後にしようとした。
緋衣呂君は私の顔が見れて嬉しいかどうかと気になり、笑顔を見せたと思えば冷たく帰す。
そして玄関先手前に暁月君がいた。
あまり目を見ないように行くが、呼び止められた。
「 もう帰るんだ、早いね 」
「 お… お邪魔しました 」
「 彼女まで帰すなんて、緋衣呂は冷たいな 」
私は暁月君の言葉にゾクッとした。
緋衣呂君と似ているのに、似ていない。
緋衣呂君が目を見れないでいる私の背中を優しく押して、玄関から出た。
途端に、二人で大きく息を吐き出した。
「 池沢君って双子だったんだ…… やっぱりそうなんだ…… 」
「 え、何がやっぱりなの?」
「 噂紛いをちょっとね… 」
それからは何も話してはくれず、緋衣呂君の家の前で相瀬さんとは別れた。
なんか、気になる……
緋衣呂君の噂って何?
実はモテるってのは知ってるけど……
見る先には緋衣呂君がいる家。
目の前なのに、すごく遠く感じる。