記憶をなくしても。
出会いは突然で
チュンチュンとスズメの鳴き声を聞きながら、私はベッドから体を起こした。
時刻は午前6時45分。
今日から憧れの高校生。
ワクワクしながらも学校に行く準備をし、家を出た。
私が今日から通う学校は花咲坂高校。(はなざきざか)
頭が良いわけでも悪いわけでもない、ごく普通の高校生が通う高校。
私はスタスタと早歩きで歩くと、校門前に見覚えのある人が手を振っていた。私は少し駆け足でその人の前まで行った。
「おはよう!しおり」
「莉奈ー!会いたかったよー」
先に挨拶をしてきたのが中学から仲良くなった、矢花莉奈。(やばな りな)そして私の名は芽乃田しおり。(めのだ しおり)
これから入学式。
入学式はあんまり好きじゃないけど、学校を探検してみたいっていうのが本音。
早く終わらないかなと思いつつ、私はどんな風になっているのか、少しずつ想像して、勝手にこの学校のイメージを膨らませていった。

「はぁ〜!やっと終わったー!ねえしおり。これから私の家来ない?新刊の漫画買ったんだよね〜。しおりが見たいって言ってた本!」
「あ、ごめんね。これから葵(あおい)を迎えに行かなくちゃ…」
「あー、そっか。葵君まだ5歳だもんね!それじゃあ、また今度」
「うん…」
どうしよう。断ってしまい、嘘をついた罪悪感が…。莉奈ごめんね!
私は出来るだけ表情に出さないように、学校を探検した。
この校舎は3階まであり、何故か3階だけが南側と北側に分かれているのだ。つまり、南側の3階に行くと、壁で北側に行けないという、とっても不便な校舎なのだ。
けど、そんなの気にしない!探検して楽しければそれで良し!と思った瞬間…
ドンッ‼︎
「す、すみませんっ!あ、あの…だ、だいじょう…」
「ごめん!大丈夫か⁉︎」
パチリ…目が合った瞬間、見覚えのある顔に少し固まったが、すぐさま声を出した。
「俊(しゅん)⁉︎」
「しおり⁉︎」
同時に大声を出した2人は、誰も生徒がいないこの校舎に響いた。
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