満月の存在。
運命の歯車
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シーンとする静かな部屋の中で、私はただ何をするでもなくボーッとしていた。


何を思うでもなく。
1人になれる場所を探して。

翔「おはよう、かのん。」

一言、そんな言葉が聞こえた。
タイミングを見計らったかのように良いタイミングで。



『……。』

私は答えなかった。答える必要も無いかと思ったから。

翔は、何も言ってこなかった。
何かを察したように、静かに。
けれど存在を放つように確かにそこにいた。


翔「……ね。」

30分ほど時間が経った時、翔は私に話しかけてきた。

『……何。』

翔「俺今日ね、3本線の飛行機雲見たんだ。いつも見るのは2本だから、なんか今日いい日かもしれない。

売店のおばさんが今日はいちごみるく奢ってくれたんだよ?いつも厳しいのに。

それでね、」


風邪気味に来た友達の鼻声が面白かったこと。
筆箱の中身をぶちまけてしまったこと。
文化祭があって、自分が劇の主役になってしまったこと。
お腹が痛くてトイレに駆け込んだこと。
先生に見つからないようにお菓子を食べてたのに、お菓子が見つかって叱られたこと。
生徒会の仕事が増えたこと。
新しいゲームを買おう思っていること。


たくさん、どうでもいい、日常茶飯事の話をしてくれた。
こんなふうに笑いかけてくれる人間は初めてだった。
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