満月の存在。
あまりにも真剣な目で見つめてくるものだから、目を合わせられなくなってしまった。

嘘だ。
人間は簡単に嘘をつくのだから。

『ふーん。どうだか。』

翔「ほんとだから。明日、教室に来て?こんな顔見せてるの、かのんだけだよ。絶対。」

……教室、ね。
行くわけないじゃん。


『あんなつまんないとこ、行かないよ。』

あんな……人間がいる所なんて。
行きたくない。
守れなくなってしまう。


不安ばかりが、私の胸をおおった。

翔「……ね、やっぱり何かあったよね?

無理に言えとか俺そんなこと言わないけど、溜め込みすぎるといけないよ。」

心配そうに眉を寄せて。
優しそうにふわりと笑って。
楽しそうに無邪気に笑って。



こんな人間を、私は守りたい。

そう、思った。
純粋に。

心が綺麗な人間に出会ったのは、いつぶりだろう。

しー。

確かそう呼んでいた気がする。
人間の汚さを初めて知りショックを受け泣いていた私に、優しくハンカチを差し出してくれた男の子。

12年も、前のことだけれど。
私が今高2だから、5歳の時。

……こいつだけでも、守らないと。
絶対に、守ってみせる。
この命を絶やさせたりなんてしない。



絶対に、燃え尽きちゃいけない命だから。


私はこの時、絶対にこの人を守ることを誓った。
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