満月の存在。
本当に、殺せと、心の底から呟いているのが、よく分かった。

?「……やっと迎えに来てくれた…、やっと…やっと……っ!!!早く……早く殺せよ……」

な?
そういって手を広げた少年の手首に、鎖が見えた。


……あぁ……まだ残っていたんだ。



奴隷が。



『名前は?』

出来るだけ、優しく。
呟いた。

?「……は、名前?死ぬ前にそんな事も必要なのか……。
俺の名前はクロ。暗闇に生きる人間だから。」

……ふーん。
クロ、ね。


『金髪くん、よく頑張ったね。』

ふわりと、包み込むように、母の温もりを感じさせるかのように、金髪くんを抱き寄せた。

クロ、そう呼ばなかったのには理由がある。
……だって、あまりにも酷いから。
暗闇に生きるからクロだなんて。


暗闇にしか生きられないと言っているようなものだから。
それは違うから。

包み込んだ金髪くんから、へ……?という間抜けな声が聞こえた。

クロ「な、何して……っ?」

『よく頑張った。
怖かったね。
人を殺すのは辛かったでしょう
罪悪感で押しつぶされそうになったでしょう。
温もりが欲しかったでしょう。
泣きたかったでしょう?

誰にも相談できずにここまで来たんだね。



泣いていい。金髪くんは、私達と変わらない。』



クロ「は…っ……なんで……殺せよ……っ早くっ……!!!」

『何も悪くない。
君は悪くないから、私は殺さない。』

こういう人間は、助けてあげないと。
欲しい言葉をあげないと。

クロ「……っ……う……あぁぁぁぁぁぁぁっ」


泣き叫びたい思いを押し潰してこの子はずっと苦しんでたんだから。



それ相応の幸せも、必要だから。
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