満月の存在。
クロ「……すまない。」

悲しそうに、でも少し嬉しそうに私を見て、ぺこりと頭を下げた。

『気にしないで。
金髪くん、さ、行くよ。
君には行くべき場所がある。

私の手を取って。
捕まらないと落ちるよ。』

クロ「は!?」

『我示す場所へ。
行け。』

その瞬間、体ごと宙に浮かび上がった私達は瞬きをした瞬間に、孤児院と呼ばれる場所についていた。

満月の存在が救わなければならない子供を連れてくる場所。


",満月寮"

そう呼ばれる場所。


クロ「……満月寮?」

『親のいない子供が暮らす孤児院だよ。行きなさい。

君には未来が待っているから。』

クロ「……少し待て。
お前の事を教えてくれ。
俺を救ったお前を、少しでも知りたい。」

……ふーん。

『満月の光が照らす夜、私達は動き出す。貴方達人間を救うためだけの存在。

私は月の悪魔。
そして君は、今日生まれ変わった。
鎖から外されないと。もう、君は自由だ。』

少しだけ微笑み、鎖を見ると、ふわりと金色の光が鎖を包み、次の瞬間には、なくなっていた。

クロ「……解放……された?」

不安そうに、泣きそうな顔をして不器用にクロは笑った。

『そう、開放された。
もう自由だよ。

クロ、君はもうクロじゃない。
今日からクロは"明来,"(あく)だよ。
君には幸せになって欲しい。
明るい未来が来るようにと願いをこめたんだ。


気に入らないなら、やめてくれていいんだけどね。』

少しでも人間はいい人だと思わせないと。
そんな一心で、名前をつけた。

明来「……明来…、ありがとう、俺は今日から明来だ。
俺は、今日から進み出すよ。」

『どんな事があっても歩みを止めちゃいけない。悲しいことがあっても辛いことがあっても笑って生きて。

満月の光が、貴方を守りますように。』

明来の暗闇だった目を見ると、透き通った目に変わっていた。


……こんな私でも、変えられるなら。
あなたの未来を幸せに変えてあげたい。


"幸せになりますように。,"



心からそう願って、私はその場を去った。







今はまだ、この胸の温かみが何かを私は知らない。
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